地下潜

ネガティブファイター

神様未満

「僕は君を神様にできないんだ」

 

初めて君を見たとき、僕の心には憧れよりも先に恋の感情が芽生えてしまった。

ステージで踊る君を見て、僕は恋してしまったんだ

ステージの君は、キラキラしたアイドルなんかじゃなくって、かっこいい一人の"ひと"だった

いつからか、僕は異性に恋をするのをやめて、もうそれはほぼ意識的に行っていることだったけど、そっちの方が随分気持ちが楽だった

それからは、全然普通に異性に恋するみたく、同性に一目ぼれだってできたんだ、君の時みたいに。

 

同性は異性よりも遠い。

近いように見えるけど、恋愛となるとハードルは上がって、僕はそのハードルが高ければ高いほどいいし、飛び越えられないように一線を引くことに夢中になっていた

ぼくにとっての恋愛の作業はハードルを高くセットすることだった

飛び越えられない次元にいる人がいいし、だけどアニメや漫画の世界の人にマジになることは少なくて、というかほとんどなくて、僕が恋できて、かつ遠い存在にいるのが「同性のアイドル」だった

 

かけ離れた世界で、僕に偶然振り向くこともない君しか好きになれなかった

ハードルの高い恋を作り上げてから、もう十年近く経つのかもしれない。

絶対にこっちを見なくていい、君は神様だから…

と思っていたけど、君はやっぱり僕にとっての”恋”止まりだった

 

ぼくにはもちろんのこと神様もたくさんいる

神様と恋は全然感覚が違くって、神様は憧れの対象として掲げられる存在らしい。

例えば、趣味や嗜好、思考など、ぼくの人生はほとんどが神様たちから影響を受けているものが多い。

神様たちは僕に人生を豊かにする術を教えてくれた

それだけじゃない。

ぼくに生きる方向を教えてくれたのもこの神様たち。

ぼくの人格形成に大きく役立っているのも神様

ぼくがもう異性を好きにならない!と決めたのも、やはり神様の影響が大きいだろう。

 

対して恋は、私の理解しえない世界を見ている人ほどいい。

その人の趣味が自分と同じがいいなんて願ったこともない

もしそうなった場合、きっと神様に降格するかもしれない

 

神様と恋に優劣をつけるつもりはないけど、恋を前にすると神様たちのことなんておざなりになってしまう

そういう意味では神様の方が少し下のランクに属すのかもしれない

 

神様にできないことがわかった時、無性に悲しくもなる

嬉しい気持ちはもちろん大きい(恋する楽しさを何度でも新鮮な気持ちで味わえるのだから)のだけど、それ以上に別れが怖くて寂しくて、悲しくなる

 

神様との別れは今のところ経験していないような気がする。

恋は突然やってきた割には沸騰が早く、その分覚める(冷める)のもはやい

恋はあまりにも脆い

うっかり好きになったはずが、その人のことをたくさん知りたくって、ぐんぐん情報を吸収していき、一か月も経たないうちに君のことはほとんど知った気になる

2ちゃんねるだってたくさん読むし、君のアンチを見かけて怒りよりもこんな見方もあるのか、とどこか冷静な自分がいたりもする。

一か月を過ぎたくらいで、君のことを知り尽くしてしまって、もうこれ以上の情報を吸収できなくなる

動画再生が億劫になる

 

そんなことをしているうちに熱は冷めて、また現実の世界に目を向けだす。

 

恋になんてやっぱりしたくない

君のことを誰よりも一番、ずっと好きでいたいのに、こんなにも苦しくなる。

君との記憶は全部忘れたくない、ぼくの脳内メモリがいっぱいになっても君との思い出だけはどうか消さないで。

 

好きになって1週間くらいで永遠の愛を誓ったはずなのに、どうしてこういとも簡単に君への熱が冷めてしまうのか、自分でもわからない。

自分じゃコントロールできない。

 

恋が冷めた後はひたすら虚無感に襲われる

絶望する

 

だから君には僕の神様になってほしかったのに。

神様にできないことはこれほどまでにつらいんだよ。

わかってね